
診察室で「入院しましょう」と言われた瞬間から、頭の中が急に忙しくなります。病気のこともですが、それより先に「何を持っていけばいいのか」「お金はいくらかかるのか」「保証人の欄はどうしよう」「家のことは誰がやるのか」——決めることばかりが押し寄せてきます。この記事では、入院前・入院中・退院の日にやることを順番に整理し、ひとりでも慌てずに進めるための段取りを、大阪市内を中心にレンタルおじさんをしている「こんなおっさんDo?」がご紹介します。
不安の正体は、病気そのものより「段取り」だったりします
入院を控えた方のお話をうかがっていると、口をついて出てくるのは意外にも病気の話ばかりではありません。「入院申込書の書き方が分からない」「家の郵便受けがいっぱいになる」「職場になんと伝えよう」——そういう、ひとつひとつは大したことのない用事です。
ただ、これらはたいてい同じ週にまとめてやってきます。しかも体調が良くないときに限って来る。ひとつずつなら片づくはずのことが、束になった瞬間に「もう何から手をつけたらいいか分からない」に変わります。これは段取りが下手なのではなく、状況のほうが理不尽なだけです。
なお、検査結果そのものが怖い、診察室で緊張してしまうという不安については、一人で病院に行くのが不安な方へ|通院付き添いという選択肢で別に書いています。この記事は「入院・退院という段取りの山」のほうを扱います。
入院が決まったら、紙に3つだけ書き出す
頭の中だけで管理しようとすると、夜中に思い出して眠れなくなります。紙でもスマホのメモでもかまいませんので、「書類」「お金」「家」の3つに分けて書き出してみてください。それだけで、残りの作業量が目に見えるようになります。
▶ ①受付に出すもの・持っていくもの
持ち物は病院からもらう案内が最優先です。まずはその紙をひととおり読んでください。そのうえで、受付で提示するものについてはマイナ保険証(健康保険証としての利用登録をしたマイナンバーカード)、お持ちでない方は「資格確認書」になります。従来の健康保険証は有効期限が2025年12月1日で終了しており、期限切れの保険証を持参した場合の暫定的な対応も2026年7月31日で終了しています(厚生労働省の案内による)。「昔もらった保険証を財布に入れているから大丈夫」とは、もう考えないほうが安全です。
そのほか、診察券・お薬手帳・介護保険証(お持ちの方)・印鑑・入院申込書などは病院によって違います。ここは案内の紙に従ってください。
▶ ②お金のこと(先に知っておくと、だいぶ落ち着きます)
入院費の総額が読めないのは、かなり不安なものです。公的医療保険には、ひと月の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度があります。厚生労働省は、マイナンバーカードを健康保険証として利用すれば「限度額適用認定証」がなくても、公的医療保険が適用される診療については限度額を超える分を支払う必要がない、と案内しています。マイナ保険証を持っていない方は、事前に「限度額適用認定証」を申請しておくと窓口負担を上限額に抑えられます。
上限額はご年齢や所得によって変わりますし、食事代や差額ベッド代など制度の対象外になるものもあります。金額の見込みは、ご自身の加入先(健康保険組合・協会けんぽ・お住まいの市区町村の窓口など)や病院の会計窓口で確認するのが確実です。加入している生命保険の入院給付金についても、請求の時期や必要書類は保険会社ごとに違いますので、契約先にお問い合わせください。
▶ ③家のこと(忘れたまま入院すると、退院日に泣きます)
冷蔵庫の生もの、ゴミ出し、新聞や牛乳の一時停止、郵便物、エアコンや暖房の消し忘れ、戸締まり、そして夏場なら植木の水やり。入院日数がはっきりしないうちは、「10日いなくても困らない状態」にしておくと気が楽です。ペットや高齢のご家族がいる場合は、その預け先をいちばん先に決めてしまってください。
「身元保証人の欄が埋められない」で止まってしまう方へ
入院の書類でいちばん手が止まるのが、ここだと思います。頼める家族がいない、いても迷惑をかけたくない、疎遠になっている——理由はさまざまですが、この欄のせいで受診そのものを先延ばしにしてしまう方がいます。それはいちばん避けたい事態です。
知っておいていただきたいことがひとつあります。厚生労働省は2018年(平成30年)4月27日付の通知「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」(医政医発0427第2号)で、入院による加療が必要であるにもかかわらず、入院に際し身元保証人等がいないことのみを理由に医師が患者の入院を拒否することは、医師法第19条第1項に抵触するという考え方を示しています。
ただし、これは「病院が身元保証人を求めること自体がなくなる」という意味ではありません。緊急連絡先や支払いの確認のために記入を求められることは、実際にはよくあります。埋められない欄があったら、空欄のまま抱え込まず、病院の相談窓口に正直に伝えてください。多くの病院には「医療相談室」「地域連携室」「患者支援センター」といった窓口があり、医療ソーシャルワーカーが入退院の支援や経済的な課題の相談に応じています。手続きの相談は、彼らの本来の仕事です。
役所や窓口での手続きそのものが気重いという方は、役所の手続きが不安な方へ|付き添い同行サービスという選択肢もあわせてご覧ください。
意外と大変なのは、入院の日より「退院の日」
入院の日は気を張っているので、なんとかなる方が多いのです。しんどいのは退院の日のほうだったりします。
まず、荷物が増えています。着替えにタオル、飲みかけのペットボトル、売店で買った本、お見舞いでいただいたもの。行きは手ぶらに近かったのに、帰りは両手がふさがる。そして退院直後の体は、入院前と同じようには動いてくれないことが多いものです。会計を待ち、薬局に寄り、タクシーを拾い、家に着いたら冷蔵庫は空っぽ——これを回復途中の体でひとりでやると、その日の夜にどっと来ます。
▶ 退院後の生活の相談は、入院しているうちに
「家に帰ってから、ちゃんと生活できるだろうか」という不安は、退院してから相談するより、入院しているあいだに相談したほうが選択肢が多く残ります。前述の医療相談室や地域連携室には、退院後の療養や生活の組み立てを一緒に考える役割があります。ご高齢の方であれば、介護保険の申請や地域の窓口につないでもらえることもあります。遠慮する場面ではありません。
▶ 帰ってきた日の食料だけは、先に確保しておく
退院日にできる最大の自衛策がこれです。日持ちする食べ物と飲み物を先に用意しておく、あるいは誰かに買っておいてもらう。それだけで退院当日の負担がまるで違います。買い物に付き添ってもらうという頼み方については、買い物・ショッピングの付き添いを頼みたいときでも触れています。
入院・退院まわりの付き添いという選択肢|こんなおっさんDo?
ここまで書いたことを、ひとりで全部やらなくてもかまいません。レンタルおじさん「こんなおっさんDo?」では、入院前後の付き添い・同行のご依頼をお受けしています。
▶ 実際にお引き受けしている内容の例
入院当日の荷物運びと病院までの同行。受付や説明を待つあいだ、隣に座っていること。書類を書く手が止まったときに、一緒に案内の紙を読むこと。退院日のお迎えと荷物持ち、そのまま薬局や食料品の買い出しに寄ること。そして入院が決まってから当日までのあいだに、不安をひとしきり聞くこと。最後のご依頼は、実のところ少なくありません。
運営者は介護職員初任者研修課程(旧ヘルパー2級)を取得済みです。歩くペースを合わせる、トイレ休憩を早めに取る、待ち時間に座れる場所を先に探しておく——こうした配慮は、その学びと経験からきています。ご高齢のご家族の付き添いをお願いしたい、というご相談も歓迎します。介護をするご家族ご自身の気持ちの置き場については、親の介護に疲れた方へ|愚痴を聞く話し相手という選択肢もどうぞ。
▶ できないことは、はっきりお伝えしておきます
おじさんは医療の資格を持った人間ではありませんので、医療行為は一切いたしません。入浴や排せつの介助といった身体介護もお受けしていません(介護保険のサービスではありません)。そして入院書類の身元保証人・連帯保証人にはなれません。保証人の欄で困ったときは、必ず病院の相談窓口にご相談ください。おじさんができるのは、そこへ相談しに行く日に隣にいることまでです。
料金は1時間1,000円。大阪市内なら病院までお伺いできますし、「入院前に少し話を聞いてほしいだけ」ならLINE通話で全国どこからでもご利用いただけます。ご依頼の流れはご利用のルールにまとめています。
入院も退院も、終わってしまえば「まあ、なんとかなったな」と思える日が来ます。その「なんとか」の部分を、少しだけ手伝わせてください。



