
転職や異動をして、まだ数週間。まわりには人がたくさんいるのに、休憩時間に誰とも話さないまま過ぎていく。前の職場ではあんなに気楽だったのに、いまは「おはようございます」の後に続く言葉が出てこない。
——そんなふうに感じている方に、まずお伝えしたいことがあります。それは、あなたの性格や努力が足りないからではありません。
この記事では、新しい職場で孤立を感じるときに何が起きているのかを整理したうえで、気持ちを少しだけ軽くする方法を、大阪市内を中心にレンタルおじさんをしている「こんなおっさんDo?」がお話しします。
人はいるのに、輪に入れない
ひとりきりの寂しさとは、少し種類が違う孤独があります。
- 雑談の輪ができているけれど、どこに入ればいいのか分からない
- 昼休みに一緒に食べる相手がいなくて、席で黙って過ごす
- みんなが当たり前に知っていることを、自分だけ知らない
- 質問したいのに「こんなことも分からないのか」と思われそうで聞けない
- 前の職場のやり方を出すと浮きそうで、口をつぐんでしまう
まわりに人がいるぶん、「寂しい」と言いにくいのがこの孤独のやっかいなところです。家に帰れば「新しい職場どう?」と聞かれ、「うん、まあまあ」と答えてしまう。その繰り返しで、言葉にしないまま溜まっていきます。
馴染むのに時間がかかるのは、当たり前のことです
▶ 覚えているのは、仕事だけではありません
組織のなかで新しく入った人が一人前になっていく過程を、経営学や組織心理学では「組織社会化(organizational socialization)」と呼びます。ヴァン・マーネンとシャインが1979年に発表した論文で整理され、広く知られるようになった考え方だとされています。一般には、組織のなかで役割を引き受けるために必要な、社会的な知識や技能を身につけていく過程として説明されます。
ここで大事なのは、身につける対象が「仕事のやり方」だけではないということです。誰にいつ相談するのか、どこまでが冗談として通じるのか、休憩は何分くらい取るのが普通なのか。その職場だけの「当たり前」を、少しずつ覚えていく作業でもあります。
これは、マニュアルを読めば済むものではありません。日々の会話や様子を見ながら、時間をかけて拾っていくしかない種類のものです。数週間で馴染めないのは、遅いのではなく普通のことだと考えてみてください。
▶ 経験がある人ほど、しんどいこともあります
新卒で入った人は「何も知らないのが当たり前」として扱われます。ところが転職や異動の場合、まわりは「経験者だから分かっているだろう」と思って接します。本人は前の職場のやり方しか知らないのに、聞くタイミングを逃してしまう。キャリアがあるからこそ質問しづらい、という逆転が起きやすいように思います。
「前の会社ではこうでした」と言えば角が立ちそうで飲み込む。その飲み込んだ分が、そのまま孤立感になります。
言える相手が、いなくなっている時期でもあります
この時期がしんどいのは、ちょうど「愚痴の行き先」がなくなっているからでもあります。
- 新しい職場の人……当事者なので言えない。まだ関係もできていない
- 前の職場の同僚……「辞めなければよかった」と思われそうで、弱音を出しにくい
- 家族……心配をかけたくない。転職を後押ししてくれた人ならなおさら
- 友人……久しぶりに連絡して愚痴だけ、というのは気が引ける
どこにも出せないまま、頭の中だけで考え続けることになります(愚痴の出しどころ全般については誰かに愚痴を聞いてほしい、でも相手がいないにも書いています)。言葉にする相手がいないと、同じ考えがぐるぐると回りやすくなるのは、多くの方が経験されていることだと思います。
今日からできる、小さなこと
▶ 会話は「長さ」より「回数」で考える
いきなり打ち解けようとしなくて大丈夫です。「おはようございます」「その資料、助かりました」——短いやり取りを回数だけ増やしていくほうが、結果的に距離は縮まります。雑談そのものが苦手だという方は、人見知りで雑談が続かない方へもあわせて読んでみてください。
▶ 「分からない」を最初のうちに使い切る
入って間もない時期は、質問がいちばんしやすい時期でもあります。3か月経ってからだと、同じことでも聞き出しにくくなります。聞きにくいことほど早めに、が結果的に楽です。
▶ 職場の外に、話せる場所をひとつ持っておく
職場のことを職場の人に相談できない時期は、外に吐き出し先があるかどうかで、しんどさの残り方はずいぶん違ってきます。趣味の場でも、昔の友人でも構いません。同じように、働き方のせいで会話が減っている方には在宅ワークで一日中誰とも話さない方へ、住む場所が変わって知り合いがいない方には引越し先で知り合いがいない孤独感にも書いています。
「こんなおっさんDo?」という選択肢
「こんなおっさんDo?」は、大阪市内を中心に活動しているレンタルおじさんです。話し相手や外出の付き添いを、1時間1,000円でお引き受けしています。対面は大阪市内ですが、LINE通話なら全国どこからでもご利用いただけます。
おじさんは、あなたの職場の人でも、前の職場の人でもありません。だからこそ、「今日も誰とも話さなかった」とそのまま言えます。転職して正解だったのか分からない、という揺れた気持ちも、そのまま出していただいて構いません。評価もしませんし、翌日の仕事に持ち越されることもありません。
アドバイスが欲しければ聞いてください。ただ聞いてほしいだけなら、そう言っていただければ黙って聞きます。ご利用の決まりごとはルールのページにまとめてあります。
新しい職場に慣れるまでの数か月は、誰にとっても踏ん張りどころです。その期間だけでも、週に一度、外に一人だけ吐き出し先を持っておく。それくらいの使い方でちょうどいいと思っています。



